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バークレー・ホテルのアフタヌーン・ティー。一人45ポンド、税、サービス料別。ドレス・コードは「エレガント・スマート・カジュアル」。(C) Marino Matsushima |
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英国ではたいがいの高級ホテルでアフタヌーン・ティーを提供しているが、テーブルウェアがモダンかクラシカルか、ティースタンドを使っているか否かといった違いはあっても、内容的にはそれほどの違いはない。
そんななかでひときわ個性的なアフタヌーン・ティーを出しているのが、ロンドンの五つ星ホテル「バークレー」だ。ハロッズやハーヴィー・ニコルズといったデパートもあるファッショナブルな土地柄ゆえか、彼らが提供するのは「プレタ・ポルティー」。ティースタンドに乗るスナックやスイーツは最新ファッションにインスピレーションを受けて作られ、定期的にメニューも更新されてゆくというものだ。
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シンプルな外観のバークレー・ホテル(C)Marino Matsushima |
ナイツブリッジ大通りを折れてすぐ、クリーム色のシンプルな建物がバークレー。サイズに比してエントランスはこじんまりとし、「表札」もごくごく小さい。うっかりすると見過ごしてしまいそうなたたずまいだが、出入りするドアマンのパリッとした姿と滑らかな動きから、ここが一流のホテルであることがすぐ見て取れる。
久々に(子連れでは初めて)出かけてみると、予約した13時にはすでに7割がたのテーブルが埋まっていた。アフタヌーン・ティーといえば15時というイメージが強いが、ここのティーのボリュームを知っているリピーターが多いのだろうか。昼食を兼ねて早目に訪れるゲストが多いようだ。ほぼ全員が女性客。
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4歳児にプレゼントされたアクティビティ・ブックと色鉛筆。(C) Marino Matsushima |
席に通されるとすぐさま、女性スタッフがアクティビティ・ブックと色鉛筆を持ってきてくれた。そういえば予約の際、子連れである旨を告げると「お子様にふさわしい準備をいたしますので、年齢と性別を」と尋ねられていたのだ。ブックにはバークレーの写真を盛り込んだクイズやロンドン関連の塗り絵、クイズなどが盛り込まれ、スタッフも楽しんで作ったのかな?と感じられる。この“準備”が功を奏し、4歳の娘はティーを楽しんだ2時間ほどの間、ずっとおとなしく座っていることができた。
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ほどよい高さからティーストレイナーを通してお茶を注ぐ。(C) Marino Matsushima |
着席するとまずはお茶のセレクト。ハーブティーを含め様々な種類が並ぶが、筆者はアールグレイ、家族はバークレーお勧めブレンドをオーダーしてみる。間もなくウェイターがポットを持って現れ、ティーストレイナーを使って一人一人のカップに注ぎ始めた。銀のストレイナーがカップの上にかすかな音とともに乗せられ、お茶を通した後にまたかすかな音とともに外される流麗な動きを眺める。なんとも贅沢なひとときだ。ほどよい温度のお茶をいただきながら、続いて現れたサンドイッチをまずはいただく。この一皿だけでもかなりのボリュームだ。
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プリプリのエビやスモークサーモンが美味なるサンドイッチ。(C) Marino Matsushima |
サンドイッチを食べ進めていると、満を持してといったていでティースタンドが運ばれてきた。カラフルでかわいらしいスイーツの乗ったその姿に、娘ならずとも思わず声が出る。一般的なアフタヌーンティーは下段がサンドイッチ、中段がスコーン、上段がケーキだが、ここでは下段が冷製スープやフィンガーフード、中段がケーキ、上段がクッキーとムース。ケーキは取りやすいよう、それぞれ小さく切った厚紙の上にのせてある。おかわり自由なので「かわいすぎて食べるのがもったいない」と躊躇する必要もなく、目に飛び込んだものから取り皿に移してゆく。
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左がルブタンのハイヒール・クッキー。(C) Marino Matsushima |
ひときわ鮮やかなピンクのフィンガーフードは、口に入れてみればゴートチーズというサプライズ。ミュウミュウのバッグ型チョコは、質感の異なるチョコを両側からペイントした板チョコで挟み込んだ形状で、もちろんハンドルもついている。和菓子の上菓子のような芸の細かさだ。そうこうしているとさきほどのウェイターが透明のスティックとメニューを持って現れ、ティースタンドやメニューを指示しながら解説を始めた。「こちらは14年秋冬コレクションをテーマとしておりまして、こちらのクッキーはクリスチャン・ルブタンの靴を模しており…」。すでに何度となく述べているらしく、てきぱきとした口調。それぞれにこだわりを持って作られたことが伝わり、よりひと品ひと品をゆっくり味わいたくなる。
スナックやスイーツをつまみながらおしゃべりをする間には、ほどよいところで「おかわりはいかが?」とウェイターが聞きにくるので、「1段目と2段目だけお願いします」とリクエスト。最後に余ったクッキーなどいわゆる「かわきもの」はこれまた色鮮やかなグリーンとピンクの紙バッグに入れ、お土産にして持たせてくれた。
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「おみやげ」バッグ。(C) Marino Matsushima |
4歳児はかわいらしい形状のスイーツの数々に歓声を上げ、おなかが満たされてからはアクティビティ・ブックに夢中、と大満足のていであったが、和やかでありながらもどこか背筋の伸びるような、五つ星ホテル特有の空気を本能的に感じ取ったようで、大声を上げるでもなく、その場になじんでいた。どうやらお洒落に興味があるらしいので、もう少し大きくなれば、ウェイターさんのファッション解説にも真剣に聞き入るかもしれない。そういう点では、この「プレタ・ポルティー」は“大きな女子”はもちろん、とりわけ“小さな女の子連れ”ファミリーにお勧めできるアフタヌーン・ティーと言える。