「伝統」「格式」を重んじ、子連れ客はあまり歓迎してこなかった英国の高級ホテルが近年続々と方針を転換、「ファミリーフレンドリー」を大々的に打ち出している。サマリー記事は日経トレンディネットhttp://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20130524/1049562/?top_os13&rt=nocnt
で書いたのでそちらをご参照いただきたいが、ここでは実際に子連れで体験した2軒の宿の、書ききれなかったディテールをご紹介したい。
続々と高級車が停まる、「ミンスター・ミル」の車寄せ(C) Marino Matsushima |
コッツウォルズ、田園の美しい宿「オールド・スワン」
「オールド・スワン&ミンスター・ミル」(The Old Swan &
Minster Mill http://www.oldswanandminstermill.com/
) は、1445年創業の古い宿場宿、「オールド・スワン」に新館やスパなどを併設し、2010年に新装開業したホテル。ゲストは全員、新館のミンスター・ミルでチェックインを済ませ、新館もしくは「オールド・スワン」の客室に案内されるというシステムで、午後のチェックインタイムにもなると、ミンスター・ミルの車寄せには一目で高級車と分かる車が次々に現れる。
枕元の「お楽しみパック」とミニ・テディベア。 2歳児でも持ちやすいサイズというのがいい.。 (C) Marino Matsushima |
「オールド・スワン」に足を踏み入れると、改装されているとはいえ、デザインはリチャード3世が統治していた当時のまま。その重厚感に一瞬、「子連れで、場違いなところに来てしまったかな…」と気圧されるだけに、客室ベッドに置かれた子供用の「お楽しみパック」の存在が、ほっと心を和らげる。このお楽しみパック、各アイテムは簡単な作りでクレヨンは4色、神経衰弱ゲームはぺらぺらな紙なのだが、機能的には問題がなく、帰国後1か月経っても我が家で普通に使えている。田園の宿にマッチした「ファーム」柄というのも、心憎いチョイス。それほど経費をかけなくても気の利いたゲストサービスが出来るという、一つの例だろう。
改装時に現れたという、リチャード 3世統治時代の壁画。 (C) Marino Matsushima |
子どもの平衡感覚に働きかけそうな 遊具が揃っている。写真右は、ホテルの オーナーで、マネージャーでもある タラ・ドゥ・サヴァリーさん (C) Marino Matsushima |
ミンスター・ミルの裏手には子供用の「遊び場」があり、図画工作系からスポーツ系まで様々なアクティビティの拠点となっているが、オールド・スワンの裏手にも、動物ふれあいコーナーやちょっとした遊具が用意されている。ここの遊具、ループを吊り下げたようなブランコと平均台がメインで、この乗りにくいブランコは子供の平衡感覚を刺激しそうだし、平均台は最近の幼児教育で「脳の発達に働きかける」と注目を集めるアイテム。子を持つ身としてはこういうディテールに、ホテルの本気度を感じる。
敷地内にはさりげなくクロケーの用意が。背後にはホテル敷地内を通り抜ける ウィンドラッシュ川があり、気軽に釣りが楽しめる。(C) Marino Matsushima |
とはいえ、ホリデイシーズンを除けば子供ゲストは少数派。このホテルでは圧倒的多数派の大人ゲストたちにも、クロケーや屋外チェス、釣りなど魅力的な遊びを用意していて、外出なんぞせずに一日中敷地内のんびりしようかという気にも、1泊ではとうてい足りない!という気分にもさせる。そんななかで、一番人気はやはりスパでのトリートメントだそう。高級ホテルに泊まり、子供をベビーシッターに預けて夫婦でマッサージやフェイシャルを受ける…というのが、英国富裕層の基本的なホリデイ・スタイルであるらしい。
併設スパではフランスのYonka化粧品を使用。 (C) Marino Matsushima |
Old Swan でのランチ。レストラン内には 甲冑レプリカなど、重厚感溢れる インテリアが。(C) Marino Matsushima |
ホテルはコッツウォルズ南東部にあり、域内の主要な村、町へは最長でも1時間半ほどでドライブできる。周辺のスポットとしては、車でわずか15分ほどの距離にあるコッグス・マナーファーム(Cogges Manor
Farm http://www.cogges.org.uk/
)がお勧めだ
。領主の館を中心に、ファームやガーデンなど1800年代当時のまま(あるいは復元)を体験できるというミュージアムで、一時経営悪化からクローズされていたが、村民たちの手で数年前に再オープンしたという。
村人たちがボランティアで運営している コッグス・マナーファームとその庭園。 (C) Marino Matsushima |
マナーハウス1階のキッチンでは、アンティ ークプレートでボランティアの女性たちが クッキーを焼く。(C) Marino Matsushima |
マナーハウス内部では、エリアの歴史や当時の暮らしぶりを分かりやすく展示。子供たちはボランティアの女性達がクッキーを焼くキッチンで、型抜きを手伝うこともできる。(我が子は「5分たったら焼けているからそれまで他の部屋を見学していらっしゃい」と言われたが、アンティークの巨大なプレート上で焼かれるクッキーに目が釘付けだった。)また屋外ではヤギやアヒルたちへの餌付など、動物とも触れ合え、敷地の奥には遊具も続々と建設中なので、歴史に興味のある層だけでなく、家族連れにも最適。なにより、地元を愛する村民たちの運営ぶりに、「オールド・スワン」と共通する「手作り感」があるのがいい。ガイドブックにはほとんど載っていない穴場だが、「オールド・スワン」ともどもこっそり、しかし強力に、お勧めしたい。
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