1885年に創立、ゴッホやマティスの作品をアメリカの公立美術館として初めて購入するなど、全米屈指のコレクションで知られながら、2013年には破たんした市財政救済のため、コレクション売却の危機に瀕したデトロイト美術館。その後国内外の協力により、一点も売却せずに済んだ美術館のコレクションの中から、選りすぐりの52点が来日、明日、展覧会がスタートする。
来日したのはコレクションの中核をなす作品群とのことで、「印象派」「ポスト印象派」「ドイツ近代絵画」「20世紀フランス絵画」の4室に分類。それぞれに点数を絞り、「印象派」室では伝統的な技法の作品も展示して印象派との比較をうながすなど、初心者やファミリーにも分かりやすく、見やすい展示となっている。
作品はどれも十分な間隔をもって展示されているが、特に大きなスペースを与えられているのが「ポスト印象派」内のゴッホの「自画像」。薄闇の空間にやんわりとしたスポットライトを浴びて掲げられたその像の肩には、ゴッホが筆ではなく指でなぞった跡が何本も見て取れる。(とりわけこの画家の作品の場合、実物における筆跡、“指跡”の立体感に驚かされることが多い)。先日上演されたミュージカル『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』でも主人公(橋本さとし)キャンバスを指でなぞっていたが、その実物が目の前に現れるのだ。隣には、ヴィンセントがその自死の数週間前に、パリ市民の憩いの場を、憩いからは程遠いタッチと色彩で描いた「オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて」が掲げられ、舞台で橋本が演じたヴィンセントの、苦悩を突き抜けた境地がまざまざと思いだされる。
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