2011年3月28日月曜日

Today's Report [Music] 番外編 「提案。悲しみ、不安のただ中にある人に、癒しと励ましの歌を。」

石丸幹二「春の唄」

 311日の大震災から、2週間が経過した。
犠牲者の数は増え続け、テレビニュースでは日々、各地の避難所で寒さや不自由と闘い、また必死に家族を探す人々の様子が報道されている。
また福島の原発事故に端を発する計画停電や水、野菜の放射能汚染は、買占めや風評被害、のみならず疎開の動きも出るなど、新たな混乱を生み出し、終息の兆しは見えない。
悲しみと不安が幾重にも日本を覆い、これまでに体験したことのないその重さに、私たちは耐えかねつつも、何とかして耐えている。

そんな中で今回、インターネットの普及によるところもあってか、全世界がほぼリアルタイムで日本を見守り、国単位はもちろん、個人単位の支援の輪が広がっているのは有難く、心強い。ハリウッドスターや有名ファッションブランドは巨額の義援金を寄せ、世界的なアーティストたちも著作権料を放棄する形でのチャリティを企画している。
筆者も、地震から何時間も経たないうちに英国の知人から安否を尋ねるメールを受信し、翌日には「こちらで募金活動をしたい」という連絡があった。現地のメディアに生の声を載せたい、というのでレポートを書いて送ると、数日のうちに、数十万円相当の義援金が集まったという連絡があった。日本赤十字社に送られる予定だという。
大企業やセレブたちの億単位の寄付に比べればささやかな額ではあるが、英国の小さな村の住民たちが、遠い異国の地の被災者たちに心を寄せてくれたことが有難く、また英国人たちの悠長な気質を知っているだけに、迅速な行動に胸が熱くなった。
ACCMでサッカーの長友選手も言っているが、私たち(日本人)は一人ではない。
私たちを見守り、心寄せてくれている人は世界各地に存在している。
それを励みに、まずは何とか「今」を生き抜き、ゆくゆくは(従来の感覚・価値観に戻ることはもはや難しいだろうから)新たなビジョンを持って日々を過ごし、コミュニティ、ひいては日本という国を作っていくべきだろう。
そんな私たち自身のために、何か応援歌があるといいのではないか。口ずさみ、メロディーを思い浮かべるだけで、歌には人の心を癒し、精神を鼓舞する力がある。
悲しみの淵にいたり不安やとまどいのただなかにいたりと心境はさまざまなので、ふさわしい曲は人それぞれだが、そろそろ「立ち上がって、前に進もう」という意欲が芽生えてきた頃にお勧めしたいのが、「春の唄」。ミュージカル「ニューブレイン」の中の一曲で、石丸幹二のCDKanji Ishimaru」に収録されている。
♪春を告げる風吹いて新しい何かが始まるよ つらく凍えた冬が今終わり 歌おう春の唄を
ゆったりとしたピアノ伴奏で始まるこの曲に派手さはないが、メロディは軽やかに朗らかに展開し、歌詞は簡明。この飾り気のなさが、今は逆に心に響きやすい。
CDでは劇団四季出身のミュージカル俳優、石丸が持ち前の温かみのある声で優しく、同時に力強く歌う。後半にはコーラスも加わり、聴いていると自然に力が漲ってくる。
AmazonでこのCDの情報ページから一部試聴することもできるので(http://www.amazon.co.jp/kanji-ishimaru-%E7%9F%B3%E4%B8%B8%E5%B9%B9%E4%BA%8C/dp/B003D8ZWFE/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=music&qid=1301288958&sr=1-1)、機会があればぜひ一聴し、気に入ったら他の誰かにも紹介してみてほしい。
 出来る範囲で、出来ることを、少しずつ。そこからきっと、「新しい何か」が生まれる。

石丸幹二。アルバム「kanji ishimaru」(ソニーミュージック)は他にも、詩的に「或る喪失」を歌ったシャンソン「黒いワシ」、「死んだように生きるのはやめて」と語りかける「キャラヴァーン」など、心の支えとなりうる名曲を収録。石丸の丁寧かつきめ細やかな歌唱は、繰り返し聴く価値がある。
震災を受けて「癒し」をテーマに選曲し直したというコンサートも予定されている。
(「spring with kanji ishimaru」 4月9日、10日=日本橋三井ホール、12日=兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール)

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