2015年2月9日月曜日

Today's Report [travel] 子連れに(も)優しい、英国の美しい宿vol.3 カルコット・マナー

子連れに[]優しい、英国の美しい宿vol.3 Calcot Manor 
「子どもゲストのもてなし」を徹底した、「全ての客層を満足させる宿」

なだらかな丘陵地をのぞむ裏庭から見たカルコット・マナー (C) Marino Matsushima
コッツウォルズ南部の町テトベリーにほど近いブティック・ホテル、カルコット・マナー(http://www.calcotmanor.co.uk/)。この宿には10年以上前から何度か取材で訪れているが、ながらく「スパの充実した美しいホテル」という印象だった。 

それが一昨年、日経トレンディネットのために「子連れに優しい宿」記事を書く過程で数年ぶりに再訪し、驚いた。徹底してファミリー客をもてなす態勢が整っていたのだ。特に敷地内に建てられた一軒家の託児所はそのまま「保育園」と名乗っても良さそうな内容。ぜひ我が子も体験を、と思っていたところ、この度、家族で泊まる機会を得た。 


レンタカーをパーキングに入れ、子供とメイン棟のレセプションへと進むと、日本人らしき人々の姿が。口コミで広まっているのか、この宿ではなぜか訪問の度、ロンドン在住の駐在員一家とおぼしきファミリーを見かける。日本人好みの細やかなサービスが、彼らの間で評判となっているのかもしれない。チェックインをすると東欧訛りの長身のレセプショニストに連れられ、客室へ。私たちが通されたのはいかにも英国的な、二階建てのセミデタッチド・ハウス(1軒を二つに縦割りにした家)の離れだった。ゲートも前庭もあり、親戚の家を借りているかのような錯覚に陥る。ここでなら元気いっぱいの子連れでも周囲への騒音を気にする必要はなさそうだ。 

玄関から中に入ると、1階が大人用の寝室兼リビング+トイレ、2階が子供用の寝室とバスルームという間取り。これにキッチンさえ加われば、「住宅」としても通用しそうだ。階段の上下にはベビーゲートが設置され、子供の事故を防止。子供用の寝室の引き出しをあけると絵本や「モノポリー」などのゲームがいくつか入っていて、小学生以上なら2階にこもって「子供だけの時間」が楽しめそうだ。 

敷地内には海賊船を模した遊具もあるが、このホテル一番のセールスポイントと言えば、前述の託児所「プレイゾーン」。さっそく訪れると、この日は保育士が3名に対して乳児一人、1~2歳の幼児が2名。ほぼ一対一の状態で、子供の興味に併せ、保育士は声掛けをしてプラレールやおままごとなど、いろいろな遊びにつきあっていた。 
保育園さながらの「プレイゾーン」。2階にはDVDミニシアターやPCも。(C) Marino Matsushima
我が家の4歳児はめざとく螺旋階段にびっしりと掛けられていたコスチュームに目をつけ、「雪の女王のドレス着たい~」と意思表示。先生は「ああ、エルザのドレスね」と言いながら着せてくれ、娘は上機嫌でおもちゃの海へと繰り出した。しばらくは一人でおままごとや音の出るベビー玩具に興味を示していたが、やがて奥のテーブルで粘土遊びが出来ることに気づき、「せんせい、ねんどやりたい」とアプローチ。先生が英語で応答するのにも構わず日本語で話しかけていたが、そのうち「これでは通じない」とわかり、「eyes, eyes」「nose, nose」と知っている単語を総動員し、粘土で顔のパーツ作りを教えてもらっていた。この調子でしばらく先生に相手をしてもらえば、日本人の子どもにとってはちょっとした英語レッスンになる。旅のはじめに子供が「英語に慣れる」場としても、利用する価値はかなり高そうだ。 

館内にはフォーマルとカジュアル、二つのレストランがある。子連れの場合はパブ風で気楽なカジュアル・レストランを選ぶファミリーが多いそうだが、我が家は今回、フォーマル・レストランに挑戦してみた。フォーマルと言ってもガラス張りの室内は開放感に満ち、オープン時間(ディナーは19時)に予約すればまだ太陽も残っているので、コッツウォルズのなだらかな丘陵地を見晴らすことができる。

テーブルサイドで切り分けられる地元のオーガニック・ビーフは驚くほどフレッシュ。
ベアルネーズ・ソースとの相性も抜群。 £23 (C) Marino Matsushima
子どものオーダーでもテーブルでスープをサーブしたりと、大人と同じ扱いなのが嬉しく、子供メニューの「ソーセージ&マッシュドポテト」も日本人の感覚からすれば、十分な大人サイズ。食いしん坊の娘は嬉々として一生懸命、まだ慣れないナイフと格闘していた。大人のほうは「二人以上で」と指定されていた「地元オーガニックビーフ」のステーキを注文。焼き上がった大きな肉はテーブルサイドで切り分けられ、野菜とともに出されたが、厚めにスライスされた肉は筆者がこれまでに食べたことがないほどフレッシュで、感動的でさえあった。 

食後、離れに戻るとゆっくりとバスタイム。バスルームにごろんと置かれた優雅な浴槽に入り、ベビーシャンプーとともに用意されていたスポンジ型のアルファベットで、しばし子どもと遊ぶ。「“パパ”はどうやって作る?」「DAと…」「もう一個Dあったかな?」「あった~」。お風呂を出ると1階のダブルベッドに、一家三人、川の字になって潜り込んだ。 
美しく盛り付けられた朝食ビュッフェ。(C) Marino Matsushima
翌朝、昨夜と同じレストランに出かけると昨夜とは異なり、子供用にカラフルなプラスチック製の食器、カトラリーが用意されていた。朝は気楽に、といったところなのだろう。レストラン入口には自由にどうぞとばかりに、PCでダウンロードしたらしい塗り絵や色鉛筆が。ちょっとした待ち時間にも、子供たちが退屈しないための配慮がなされている。 

朝食はシリアルやヨーグルト、フルーツ、パンのビュッフェと、選択式の温かい料理。せっかくなのでイングリッシュ・ブレックファーストと行きたいところだが、前夜のディナーがボリューム満点だったため、我が家は大人がオムレツ、スモークサーモン、子供はパンケーキを注文した。パンケーキは薄手のクレープ状で、ビュッフェも楽しむことを考えれば、子供にはほどよい量だ。 
食後、ちょうど「子ども入場可」の時間となったのでスパのプールへと向かう。誰もいなかった温水プールには次々と家族連れが現れ、備え付けの魚の形をしたビート版を手に、水遊びを楽しみ始めた。我が子も日本から持参した浮き輪を使って水に入ったり、ビート版につかまってみたり。こんなふうに「子ども入場可」の時間が限定されていることで、ファミリー層も、静寂を楽しみたい他のゲストも互いに気兼ねが要らないのがいい。この屋内プールのほか、屋外プールやレンタサイクルもあり、近くの乗馬センターとの提携もしているので、親子での思い出づくりも様々に可能だ。
腹ごなしもできたところで、ゆっくりと荷造りをし、チェックアウト。レセプションでは子供にミネラルウォーターのペットボトルと板チョコの入った「お土産バッグ」のプレゼントが。最後まで子供の心をつかむ、心憎い宿なのだった。

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